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逆説の日本史〈6〉中世神風編 (小学館文庫)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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| 人気ランキング: | 9185 位
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仏教とは何か
シリーズ6巻目であるが、ここでの見どころは1-3章の仏教に関する解説だろう。現代に於いてここまで簡潔に、しかも深く仏教を初学者に説明出来る歴史家は日本にいないのではないか。特に、現代仏教に直接影響を及ぼした鎌倉時代の新興仏教の成立と、その背後にある歴史については、知的好奇心を揺さぶられ、大いに納得をした。
これ以外にも元寇の行われた背景と、その当時の鎌倉幕府の対応などは、ほとんど初めて知る内容で、とても興味深い。
本書は文庫本で500ページを超える大作で、しかも内容が、「仏教」、「元寇」、「鎌倉幕府の滅亡」と3つの独立したモノがまとめられているため、一気に読み切るのには骨が折れるが、それでも、これらのテーマはこの巻において説明されなければならなかったのだ、と読み終わると気がつくはずである。
井沢氏の「逆説」シリーズの中でも、鎌倉仏教史をわかりやすく紹介する啓蒙書
前半の部分は宗教的な理解・知識に疎い私が、日本仏教史を非常に解りやすく説明されており、興味を抱くきっかけとして入門書的役割を担ってくれた。これは氏のシリーズで一貫して主張されているところであるが、やはり宗教的理解なくして歴史を、特に歴史上の人物の行動の動機を推理することは難しいと感じされられた。
後半の元寇の分析に関しては、元寇での日本の勝利を「ビギナーズラック」とし、現在も続くと思われる日本の外交・軍事音痴ぶりを、鋭く指摘する。
シリーズの中でも特にお勧めの書と考える。
一冊としての統一性のないのが残念
「逆説シリーズ」第六作。鎌倉新仏教の話から"建武の新政"までを描いたもの。仏教に関しては、井沢氏の「逆説」ではなく、釈迦の原仏教から鎌倉新仏教の各宗派の説明、そして現代への繋がりを丁寧に解説し、本書の半分を費やすと言うシリーズでは異色の作品。
確かに言われて見ると、親鸞、日蓮、道元、法然、源信、明恵など仏教界の偉人達は鎌倉時代に集中している。彼らの業績・思想などを丹念に説明している前半の3章は労作である。特に現在との係りを述べている部分が鋭く、普段我々が何気なく行なっている、「労働を厭わない行為(思想)」が道元から発しているという指摘はナルホドと思った。日蓮宗には「日蓮宗は正しいから正しい」という無限論理があり、これが石原莞爾等に引き継がれたとしたら恐ろしい(勿論、軍部の活動には日蓮の責任はない)。個人的には、「仏教編」を一冊に纏めた方が良かったと思うが、頁数の関係でこの時代の最大のイベント「元寇」に移る。事件の記述自身は平凡。本事件による「日本=神国」論が昭和の軍部に利用されたのは確かだが、それ以前の一般大衆にこの意識があったかどうか怪しい。著者の記述がこの辺、曖昧である。それよりも時宗を中心とする武士の働きをもっと高く評価して欲しかった。日本本土が侵略された経験がない理由を"海"に求めるのはレベルが低すぎるだろう。"建武の新政"は事実を記述しただけだが、その中で昭和天皇の戦争責任論に触れている。実は「昭和天皇=平和愛好者」というイメージは戦後に創られたもので、戦中は日本の勝利に欣喜雀躍していたのである。多くの日本兵が「天皇陛下の御ために」と言って死んで行った事と重ね合わせ、「昭和天皇に戦争責任はない」というのは暴論だろう。
前半の仏教に関する丹念な取材と懇切丁寧な説明に比べ、「元寇」、「建武の新政」は通り一編の記述で全体のバランスが良くない。しかし、前半だけでも労作ぶりを感じさせる出来で、「逆説」こそ無いものの、読者に知見を与える力作。
案外、受験生が読むのに良いような気がします
この著者に関して、「先行研究のパッチワーク」という悪口も聞こえてくる。ま、そりゃ当然で、でなけりゃ一人の人間がこれだけの通史を書けるわけがない。引用文献も啓蒙的な概説書が多い。著者は明らかに、各種の先行研究から「言霊」論だの「怨霊」論だの「和の思想」論だの「ケガレ」論だのの着想を得て、そこから実証研究を再編集して自分なりのストーリーを構築している(梅原猛の名などが挙がっているが、他にも様々あろう)。その意味で、著者は編集者的な知性の持ち主だと思う。この巻の前半部を占める日本仏教史などは、それを顕著に示している。
私などは本文中にも度々引用される末木文美士の研究が一番の下敷きになっていると感じるが、他にも参照した文献は多いだろう。で、仕上がった「パッチワーク」の出来栄えだが、やはりこれは平易で目配りの利いた、かつ発見に満ちた優れたまとめだと思う(日本仏教史の解説書を紹介してくれと頼まれたら、末木の『日本仏教史』(新潮文庫)との併読を薦める)。参照文献一覧の無い恨みはあるが、週刊誌連載の一般向け啓蒙書でもあり、ま、ウルサイことは言うまい(…あと、文章が雑)。
「逆説」を謳い、通説にことごとく異を唱えながらも、よく見直すと扱われる題材がことごとく中高レベルの歴史教育で取り上げられるような名場面ばかりというのも、著者が一次史料から出発したのではないからだろう。それは記述の「抽象性」に帰着するワケだが、旧来の史学に対する批判に関してはもっともな点も多いし、読み物としては楽しめる。案外、高校生あたりはこのシリーズを入口にした方が日本史の成績アップにつながりそうな気がする。
日本仏教史概説として第1章から第3章が特に秀逸
元寇とその影響、鎌倉幕府の滅亡、建武の新政を扱った章も面白いが、本書で特に秀逸なのは、既に多くのレビュアーが指摘されているように、日本の仏教受容から始まって鎌倉仏教の成立・展開(戦前に至るまで)をわかりやすく説明してくれた最初の3章です。特に、最澄対空海というライバルに触れた箇所が、その余韻を持った終わり方とともに心に残る。最澄は文明は書物によって承継できると考え、空海は文明とは本人が体得しなければ意味のないものと考えた。結果として、宗教者・思想家として最澄は空海にそのスケールでは及ばなかったかもしれないけれども、弟子には恵まれ、その影響は鎌倉仏教の開祖にまで引き継がれる。「研究者」としての才能と「教育者」としての才能は全く別物と喝破する作者の指摘は素晴しい。碁の世界でいえば、最澄は木谷実で空海は呉清源だとする例えもわかりやすい。一方で、あれが月だよと指差す時、人が指(真理を示すための道具)にとらわれて月(真理)を見ないことを戒めた空海の教えも実に深い。似たような会話が展開された有名な映画の冒頭がすぐに思い出されますね。そう「燃えよドラゴン」。"Don't think. Feel."の世界ですね。文明・文化の継承の2大潮流の対比を試みた章として、第1章は実に奥行きが深く、これだけのためにも本書を一読することをお薦めします。
小学館
逆説の日本史〈5〉中世動乱編 (小学館文庫) 逆説の日本史〈7〉中世王権編―太平記と南北朝の謎 (小学館文庫) 逆説の日本史〈8〉中世混沌編―室町文化と一揆の謎 (小学館文庫) 逆説の日本史〈4〉中世鳴動編―ケガレ思想と差別の謎 (小学館文庫) 逆説の日本史 (3) (小学館文庫)
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